『思いやりでつくる地域防災~防災力=地域力~』(11/20)レポート

11月20日、パルトピアやまぐち大ホールにて山口市主催、さぽらんて・りす会山口共催の「思いやりでつくる地域防災~防災力=地域力~」防災講演会・ミニシンポジウムが開催されました。
聴講に足を運んでくださったのは自治会の役員、地区社協、自主防災組織のリーダー、民生委員など、地域の中心となる方々。早くから来られて後ろに飾られた市民活動団体の展示物や防災グッズを熱心に見ておられたり、山口市民の防災意識の高さが伺えました。

●DVD上映で震災の恐ろしさを再確認
講演の前に東日本大震災の津波映像上映が行われました。あれから5年が経ち、メディアではあまり目にしなくなっている映像ということもあり、改めて震災の恐ろしさや防災や避難への意識について再確認しました。映像の衝撃で涙を流す人もおられました。

●陸前高田市 佐藤一男氏の講演「思いやりでつくる地域防災」
津波の映像がご自身が住んでいる陸前高田市のものだったためか、声が震えておられた佐藤さん。東日本大震災は、家族がバラバラになっているときに起こったのだそうです。学校の体育館に避難し、佐藤さんが避難所運営に携わるようになったのはもともとあった地域のつながりから。地域のお祭りを毎年やっていて、その時の役割を持つ人たちが避難所でもそれぞれ役割分担し、得意や職業を活かすことができて役員として動いていたそうです。
また、避難所はどうしても取り仕切るのが男性に偏ってしまいがちなので、女性の意見を優先的に取り入れるようにしたり、支援物資は全て見えるところ(体育館ステージ)に置いて、時間を決めて配布したりといろいろな工夫をして平等になるようにと心がけておられたそうです。
最後に言われた「震災という言葉がついたのは、死者が出てしまったから。地震が来てもみんな生き残ることができれば大きい地震だったねで終わるようにしっかり備えたい」という言葉が印象に残りました。
避難勧告、避難指示が出ても、最終的に避難を判断するのは自分自身。
私たちにできることは、防災グッズを備えたりハザードマップを確認したりすることはもちろんですが、日頃から地域のつながりを持っておくこと、顔の見える関係をつくっておくことが今できる地域防災の形なのかなと思いました。

●ミニシンポジウム「思いやりでつくる避難所のカタチ」
後半は、見た目では分からないけれど非常時に配慮を要する方々の避難所での困りごとなどを理解してほしいという思いのある市民活動団体と山口市の保健師がパネリストで登壇し、りす会山口の弘中秀治さんがコーディネーターとなってのミニシンポジウムを開催しました。市民活動団体は次の3団体が登壇し、それぞれの団体紹介と避難生活の不安を訴えました。

*アレルギーっ子の会ぽれぽれ
子どものアレルギーに悩む母親の会。アレルギーやアトピー、ぜんそくへの理解を深めるための情報交換や座談会を行っている団体です。避難所での生活で心配なのが、炊き出しや配給品では食べられないものがあるということ。材料に何が入っているのか、どんなものを作った調理器具かもわからない。ひどいアレルギーを持つ子は空中を舞っているアレルギー物質でも反応を起こすこともあります。少しくらい食べても大丈夫という考え方から子どもたちを守らなくてはなりません。

*マザーズスマイル山口
発達障害の子どもを持つ親の会です。独特なコミュニケーションや行動面で困り感がある子どもたちがいるということの理解啓発を促したり、親同士の情報交換や交流を行っている団体です。災害時に心配されることとして、まず災害というものを理解できるのかということ。変化に弱く不安の強い子どもたちが多いので、パニックになるなどPTSDの心配もあります。その親は周りから子どものことで視線が刺さり、居づらくなるため孤立しやすくなります。

*NPO法人 山口県腎友会
腎臓病に関する正しい知識の普及、社会啓発をしている団体です。患者同士の情報交換や支え合いも行っています。災害時に心配なのは、食事です。腎臓病を持つ患者は、リンとカリウムの接種を制限されているので、食べるものにも気を使わなければなりません。また、病院での透析ができないと生死に関わるので、透析施設の被災も心配です。

そして、阿東で主に高齢者の方々をケアされている保健師代表の近藤さんも登壇。
保健師という立場から、実際阿東地域で水害があったときのこと、ご自身のご実家が水害に遭われた時のことなどを話されました。

仕事で防災に長年携わってこられた弘中さんのリードでシンポジウムが進行されていきます。

*(災害弱者は)どこに相談したらよいか
まずは自分が聞きやすいところ、人に聞く、相談するのが一番。「お互い様」の精神で自宅以外の頼れるところをたくさん作ること。困っていることや支援してほしいことなどを知っていてもらうことが大切。やはり、人とのつながりなのですね。

*子どもたちの心のケアについて
東日本大震災で、子どもの中に「津波ごっこ」をしている子がいたそうです。これは、子ども自身が自分の頭を整理し、日常を取り戻すためにやっている、必要なこと。胸に住む「PTSD」を退治するためには「笑い」「音楽」「一人泣くこと」を大切にしたい。

*避難先で特別な配慮をしてもらいたい
自立すること=つながりを増やすことだといえます。備え、つながり、支え合う地域づくりが大切。特に障がい児(者)は依存先か限られるので、依存先を増やしていくように。

比較的災害の少ない地域と言われる山口市でも、いつどんな災害が起こるかは誰にもわからない。山口市を背負って立つ皆さんが、とても真剣なまなざしで聴いておられました。
また、今回はさぽらんてスタッフ小田のグラフィックハーベスティングのおかげで、この会を振り返りやすくなっています。ぜひここを出発点に、まずは各地域での防災講座などへつながっていけたらいいなと思いました。

【スタッフ藤岡】

たくさんの御来場ありがとうございました
たくさんの御来場ありがとうございました
佐藤一男氏による講演
佐藤一男氏による講演
シンポジストのみなさん
シンポジストのみなさん
防災グッズやポスターの展示も
防災グッズやポスターの展示も