「地域を巻き込むプロになろう!」セミナーⅠ講座レポート

地域を巻き込むプロになろう!
山口県県民活動中核的人材育成セミナー
NPO・地域コミュニティ・企業向け 全5回

山口県県民活動団体中核的人材育成業務として、NPO法人山口せわやきネットワークが企画・運営のセミナーの第1回が先日開催されました。

講座名:Ⅰ.社会課題解決への企画と財源確保
~寄附事業開発をするためのファンドレイジングと遺贈~
日時:12月5日(土)13:30~16:00
会場:防長青年館パルトピアやまぐち
講師:栗田 将行(くりた まさゆき)氏 <福岡市社会福祉協議会>
コーディネーター:久津摩 和弘(くづま かずひろ)氏 <地域福祉ファンドレイジングネットワーク代表>

福岡市社会福祉協議会の取り組み~企業との共働事業メニュー~として以下の5項目を紹介してくださいました。
1.ずーっとあんしん安らか事業
2.住まいサポートふくおか
~厚生労働省「低所得高齢者等住まい・生活支援モデル事業」指定~
3.買い物支援バス
4.寄付つき商品開発(共同募金型・独自事業型)
5.地域活動ツール作成費寄付

1.「ずーっとあんしん安らか事業」
事前に預託金を預かり、葬儀、家財処分等を実施するサービスです。

定められた条件を満たした福岡市内に居住する65歳以上の方を対象に、定期的な見守りサービス、必要に応じた入退院支援・書類預かり等のサービスの提供をします。
そして、死後の対応は、葬儀関連、家財処分、死後手続きを実施し、預託金を精算後契約終了となります。

この事業の利用料金収入だけでは採算性が良くないので、ここから遺贈につなげていくことがポイントのようです。なお、遺贈とは「遺言により無償で他人に財産を与える行為」です。

H27年9月末時点での契約者数は129名、うち遺言書作成者は57名、うち26名が福岡市社協を遺贈先に指定したそうです。
相続人が不存在で、遺言書がなしまたはあっても一部遺産についてしか書いておらず遺産が残る場合、遺産は最終的に国庫に帰属してしまいます。
でも福岡市社協に遺贈することにより、地域に密着した地元の社会課題の解決に役立てることができるそうです。

2.「住まいサポートふくおか」
「緊急連絡先」や「保証人」を確保できない高齢者の民間賃貸住宅への円滑入居及び入居後の生活支援を行うサービスです。

市社協をコーディネーターとして、高齢者の入居に協力する不動産事業者や入居支援を行う「支援団体」による「プラットフォーム」の構築を行います。

福岡市は将来的に「単独世帯数」が「2人以上世帯数」より多くなると考えられています。
また、全国平均と比べて、共同住宅率、借家率、単独世帯率がかなり高いとのことです。
このような状況下において、福岡市の民間賃貸住宅事業者は、金銭的な保証及び緊急時の連絡先がともに得られない高齢者の入居を断ることが多く、市社協で事業化の運びになったそうです。

高齢者と不動産会社がウィンウィンの関係になることで、この事業がうまくいくようです。つまり、立ち退きや家賃を下げるため等、様々な理由で転居を希望する低所得高齢者のニーズがあるという点。他方で不動産会社は、「住まいサポートふくおか」のロゴマークをステッカー、名刺等に活用することで、「高齢者に優しい企業」であることをアピールして他社との差別化を図ることにもなり、空室対策になるという点です。

このモデル事業の実践から、特に家主から必要とされるものは「見守り、死後事務委任、家賃債務保証」だということが分かってきているそうです。
将来的には、その他の住宅困窮者(障がい者世帯、外国人世帯、子育て世帯等)へ対象者を拡大していくとのことです。

3.「買い物支援バス」
地域貢献活動に興味のある企業がマイクロバスを運行して買い物困難者を支援するサービスです。

交通手段のない高齢者の買い物に役立つだけでなく、閉じこもり予防、住民同士のつながり作りにもなっているとのこと。
個人の問題ではなく、地域の課題と捉え、取り組むことが「地域福祉の推進」として奏功しているようです。

4.寄付つき商品開発

企業や大学に「売上の一部を寄付する」商品を開発してもらうものです。
社会課題解決を目的とした寄付によって、商品の価値を高めることになるそうです。

5.地域活動ツール作成費寄付

緊急連絡先や病歴を記載し、高齢者等が外出時に持ち歩く「緊急時連絡カード」の作成費を企業に寄付してもらっているそうです。
ブランディングやイメージアップなどの事業戦略に役立つ「広報」効果に訴えているとのこと。

最後に栗田さんは「社会課題を解決する事業を立ち上げる際に心がけていること」として、
①具体的な行動を起こす
②解決の糸口は他機関との関係性のなかにある
③実行委員会方式で事業化する
の3点を挙げておられました。
同時並行で複数のことを進めていく中で失敗するものもあるが、うまくいくものを育てることが大切だということです。

この後、久津摩氏が講座のまとめをしてくださったあと、「遺贈へのアプローチ」について、講座参加者が各テーブルでグループディスカッションを行いました。

この国で少子高齢化・核家族化・無縁社会化が叫ばれて久しい。
そして、支援を要する高齢者の数はますます増えていくことが予想され、解決すべき社会課題は山積しています。
社会課題を解決することで地域の未来につながり、支援者の共感を得られるプログラムを作るということ。
そうすれば、様々なニーズを掘り起こしていくことが可能であり、そこでビジネスチャンスの芽をつかむことができる。
ソーシャルビジネスの奥深さを垣間見た有意義なセミナーでした。

次回講座は2016年1月16日(土)に開催です。
乞うご期待!

無事、開催されました。
詳細はこちら

<スタッフ:高橋>

栗田講師
栗田講師
久津摩コーディネーター
久津摩コーディネーター