さぽカフェVol.2「みんなつながっている。アフリカから日本がみえる」

10月8日土曜日、さぽカフェ2回目のゲストは山口県立大学国際文化学部教授の安渓遊地さん。今回はスペシャルで、山口大学パート教員をされている奥様の貴子さんもいらしてくださいました。
スタートは安渓先生のオカリナ演奏からでした。

■1990年までのアフリカでの活動
1978年、79年、83年、90年の計4回、コンゴ民主共和国の人口100人程度の村に行き生活しました。
村での生活は自給自足が基本です。茅葺き屋根や壁も自分たちで作ります。混作の焼畑農法で、種をまくけれど耕さないため土が流れず、畑は数年で森へ帰るとのこと。森と共存する持続可能な農業が息づいています。そして現地の人は「料理とは土から口まで」と言い、食事に必要なものは塩以外すべて村のものでまかなうということです。貴子さんの研究によると、買ってくるのが塩だけで2100種類にもおよぶメニューができるとのこと。
また、村にはお金はあるけれど、物々交換の仕組みができていて、お金を使わない・あてにしない社会ができているそうです。なぜかというと、コンゴは一時期年間のインフレ率が2000倍にも達し、朝と昼とで値段を付け替えなければいけないくらいだったとか。でも物々交換ならその必要はありません。誰もがお金がなくても食べるのに困らない暮らしが出来ます。

■私たちの簡単便利な暮らしの裏側、アフリカの現状
コンゴは豊かな森林・水資源の他に、埋蔵量が世界の8割を占めるといわれるタンタル(レアメタル)があります。携帯電話が現在のサイズまで小型化したのはタンタルが発見されたからです。しかし、このタンタルが原因で内戦が起こり、現在も略奪・強姦・強制労働など、「平和以外何でもある国」と呼ばれるようになってしまいました。
日本とは関係ないようで、実は深く関係があるんです。例えば2001年、タンタルの価格が10倍に跳ね上がる事件が起きました。プレステーションが世界中で売れすぎて、タンタルの需要が急増したためです。また先進国の私たちの持っているパソコンや携帯や電化製品が、地球の裏側のアフリカで、悲劇を生んでいるのです。
では、携帯やめられますか?いいえ、それは現実的ではないですね。ではどうすればいいですか?
・・・しばらくみんな無言。誰からも回答なし。

私は10年くらい同じ事をたくさんの方に質問していますが、答えは未だありません。
アメリカでは電化製品のタンタルの原産地表示がはじまっています。食べものの原産地表示のように、電化製品も材料の原産表示をはじめ、消費者がどんなところでとれた材料を使っているのかを意識するようになることが解決の第1歩です。買う時にぜひ尋ねてみてください。「このタンタルはどこの原産ですか」ひとこと多い消費者が増えることが、社会を変えていきます。私はこれを「財布の力」と呼んでいます。

■自然との共生
日本の酪農家が国際協力でアフリカの高地の村にいったとき、やせ細った牛をみて「3倍乳をとれるホルスタインを飼えばいいのに」といったそうです。すると現地の長老は「3倍乳がでる牛は、草も3倍食べる。すると山から草がなくなり山崩れがおこる。草は元に戻っても山はもとにはもどらない。だから私たちには今いる牛がちょうどいい」といったそうです。

■なるべく自給する山口でのくらし
帰国後、アフリカで自給自足の生活にふれた私たちは、外国から奪ってくるのではない生活をしたいと思い始めました。そんな時、声が掛かり、縁あって山口に来ました。山口の仁保の田舎で、林業家から直接木を買い、県産木材90%以上で建てた家で生活しています。100年もつ家と言われています。
またできるだけ自給自足の生活を、ということで、週末農業で稲や野菜を育てたりと実践しています。

□交流会・カフェタイム
安渓夫婦手づくりのご自慢のお米で貴子さんが握ってくださった玄米おむすび2種と、徳地の健康茶(カワラケ.ツメイ茶)をいただきながらカフェタイムとなりました。
途中、参加者の女性2人が巻きスカートを巻いて、遊地さんのオカリナ演奏といっしょに踊ったり、貴子さんが赤ちゃんを抱っこするスリングとして利用する方法をレクチャーしたりと、わいわいと和やかな時間をすごしました。

□質問タイム
質問:養子になったコンゴの村には90年以降行きましたか?
回答:行く予定だった2日前にコンゴで内戦勃発し、それ以来行っていません。

質問:1990年から98年を境に、アフリカでの活動が変わりましたか?
回答:それまでは、アフリカに行って、現地をレポートする研究でした。でも98年にアフリカで森とゴリラを守る人がいて、こういう人たちを日本に招きたいと思うようになりました。今は自分もアフリカに行くけれど、アフリカの専門家を日本に招き、お互いの国を行き来する活動に変わってきました。

質問:日本のストレス社会とアフリカの違いは何ですか?
回答:アフリカは「だいじょうぶだよー、いいんだよー」というポジティブ感、「みんなちがってみんないい」を認める社会なんです。子どもたちは、2才までは母親にくっついて過ごします。2才過ぎると5才くらいまでは兄弟や近所がめんどうをみます。5才過ぎると男の子は父親の仕事についてまわり、まねをしながら仕事を覚えます。女の子は自分の畑を持たせてもらって作物を作ります。一種の花嫁修業みたいなもの。5才が一人前。笑いも絶えない社会です。

■最後に、祝島のこと
質問の最後に、アフリカと祝島のくらしの共通点をはなしてくださいました。
祝島には主な産業がない、だから若者が帰って来られない、という人がいるがそれは違います。祝島はアフリカとお同じで、お金に換算しないで生活できる仕組みが息づいているのです。
アフリカの物々交換と同じで、無理にお金に換算しないしかけがあり、だから安心して暮らしていけるのです。福島原発と映画の影響で祝島にはたくさんの見物客があります。その人たちが祝島だけではなく、上関にも来るようになったらいいなと思います。

<感想>
ボランティアやNPOの活動はお金では換算できません。時によっては「ありがとうや笑顔・自分の汗や達成感」が対価だったりします。物々交換のような、お金に換算しない仕組みが広がることで、ボランティアやNPOへの理解や参加もまた広がるのではないかなと思いました。
私の1回目のさぽカフェ取材がすろーらいふ・山口ネット和の白木さん。2回目が百姓庵の井上さん。今回は安渓夫妻。全員、自然豊かな山口だから出来る暮らし(土からつくること)を大切にしているという共通点があります。山口でもみんなつながっています。ズバリ、山口のよさって、ほどよく田舎なところです。このよさを大人自身が体感し、実践すること・子ども達に伝えることが未来の山口を明るくするんだな、と再確認したさぽカフェでした。

☆今回はじめてユーストリームを使ってさぽカフェを生放送しました(写真⑥)。
こちらから当日の様子や内容がご覧いただけます。
市民広報スタッフ 千々松

オカリナを吹く安渓遊地さんです。
オカリナを吹く安渓遊地さん
奥様の貴子さんです。
奥様の貴子さん
笑顔でお話をする安渓先生です。
会場のようす
アフリカの布(カンガ)の使い方を説明を受けています。
アフリカの布(カンガ)の使い方を説明
美味しい手づくりの玄米おにぎりです。
手づくりの玄米おにぎり(とってもおいしかったです~)