さぽカフェvol.4『捨てて、失って、あきらめて、気づいた幸せのカタチ』

日時:2010年10月31日(日)13:30~15:30
今回のゲストは、パークロード沿いに「中国茶館 茶座」を開いて5年という、あんのなおこさんです。

今回は11名の方が参加。
中国に興味がある、
中国で働きたい、
これからの働き方や生きかたの参考にしたい、
中国に住んでいたことがある、
お店を開く夢がある、
・・・など、世代を超えて、いろいろな立場の方が      集ってくださいました。

あたりに漂ういい香り。。。
今日のお菓子は、あんのさん手作り焼きたての       エッグタルト(写真丸1)です。
そしてお茶は、あんのさんの運命を変えた「八宝茶」を用意していただきました。

■八宝茶との出合い
京都の外国語大学で中国語を専攻。
卒業後は大阪にある旅行業界へ就職し、
ツアーコンダクターとして台湾や中国を行ったり来たり。
あるとき仕事で行った北京。
鼻水が凍るくらい寒い真冬に入ったお店で、羊のしゃぶしゃぶを食べていたとき(中国では、体がぽかぽかになるので羊をよく食べます)、店員さんがお茶を淹れてくれました。
1メートルぐらい離れた所から、ポットを持ちカップにむかって一滴もこぼさずにお湯を注ぎました。
思わず「あーっ、こぼれる!」と言ってしまったというあんのさん。
そして、にこりともしない店員さん。そこに感じた、中国人の洒落っ気。
そのときのお茶が八宝茶で、中国茶に心をギュッとつかまれた瞬間でした。(写真丸2)

2年前から、茶座でも八宝茶(写真丸3)を出しています。
「お疲れの方に」と出すと、人気メニューに。日本の風土にあわない気がしていたので、意外でした。
そんなときに起きたのが、あの餃子事件!中国産というだけで、嫌がられるようになってしまいました。
それならば、山口の食材を使って八宝茶を作れないかな?
そんな風に考えて、挑戦してきた山口版八宝茶がとうとう完成しました。

~というお話を聞きながら、自分たちでお茶を淹れてみます~
八宝茶に入っているのは、ナツメ、いちじく、しょうが、梨、みかんの皮、菊、氷砂糖、烏龍茶。
(入っている内容の解説は、最後に記載)

■旅立つまで
大阪で就職したてのころ、先輩から
旅行中の人は開放的になっていて、楽しませてほしいと思っているもの。
オチがない、とか、おもしろいことを言えとか、関西ならではの言われ方もしました。
人の喜ばせ方を、体で覚える7年間。
それが、いまのこやしになっているのは事実です。
でも当時は、常にハイな感じで、にこにこ笑っているしかなくて。
29歳で自律神経失調症になり、一週間の入院。
退院したとき、プツンときれてしまいました。
とても寒い日で、さみしかったからかもしれません。急に心細くなってしまったのです。
ちょうど母の体調が悪いこともあり、「母の看病をします」と自分に嘘をついて萩に帰ってきました。
父には「卑怯だ」「早く出ていけ」と言われる日々。悔しかったけど、戻る場所はありませんでした。
30歳の誕生日、実家の裏庭で泣きながら迎えた誕生日のことはいまでも忘れません。
バイトをしながら、中国語の勉強を再開。
それから、中国への思いを新たにし、「あばよ!」と蘇州に旅立ったのです。
萩に戻ってから、一年後のことでした。

■30歳、中国へ
蘇州大学に入学します。
蘇州では、楽しい毎日でした。
自分が欲してキャンパスにたつと、こんなにも楽しいのか!自転車でキャンパスを走りながら、鼻歌を歌ってたぐらい。
中国では、お茶を囲んで男たちが長々としゃべっている風景に出会います。
だんだん、何をしゃべっているのか、気になるようになってきました。
少し歴史を紐解いてみると、中国には昔から茶館があったことがわかりました。
大昔から、サロンとして人が集う場所。いまのように電話もパソコンもない時代、お互いが交流し合わないと情報が流れないことから、情報交換の場としても成長していきます。

茶館では、人と人とがふれあうことこそが楽しさでした。
それを、小さいけれどやっているのが、いまの茶座です。

大学院に入り、そんな茶館の歴史を調べたかったのですが、
その当時は歴史的な背景(革命の話し合いの場となり、1967年、文化大革命が起こる。このとき、すべての茶館が壊される)もあり、じっくり調べられる状況ではありませんでした。
そこで、大学院へ行くことを諦め、ホテルで働くことに。
いまからでも、機会があれば調べてみたいと思っています。

それから、縁あって中国人と結婚し、娘さんを出産。
6年間住んで、4年間は日本と中国をいったりきたり。中国という身分社会で生きてきました。

■子育て中のこと
旦那さんのことや、いろんなことに耐えられなくなって、ご近所のおばあちゃんの家のドアを叩いたとき。
迎え入れて、話をきいてくれたそのおばあちゃんは、「日本人は辛抱強いね」と褒めてくれました。
中国の一般的な家庭では、みんなお手伝いさんをやとっているなか、ひとりで子どもの世話をし、家事をしていたあんのさんの姿は、がんばってるね、とご近所さんの間で認められていたそうです。
「なにかあったらみんな手をかしてくれるから」という温かい声。
さらに、「あなたの旦那さんも立派だよ」という言葉も。
トゲトゲしていた心が、やさしくなった一言でした。

中国人は、ケンカをするとみんなでみています。
あれは、ただの野次馬ではなくて、すべてをみんなで共有すると、ストレスから早く解放されて、喜びも増えるから。
二人だけでケンカはしないんです。
ただみてるんじゃなくて、なんとなく丸く収まるように、取り巻いているんです。
これが、中国で学んだ術。
おばあちゃんの言葉も、そんなところからきているんですね。

■それからと、いま
いま、43歳。
ただがむしゃらにやってきました。
離婚した旦那さんは、君の好きな中国茶の店ができるようにと、慰謝料のかわりに人脈をくれました。
あなたのバイタリティならやっていけるでしょ、ということかな。
それから、山口で「負けてたまるか」という貧乏生活。
半分みじめ。でも、知り合いがいないからやってこれました。
「趣味の店ができていいですね」と言われることもあるけれど、そんなものではありません。
生活のため、食べていくため。いまでも、いつだめになるかとヒヤヒヤしています。

~蘇州の風景などのスライドをみます~
ここで、終了時間。
参加者のみなさんに感想をお聞きして、あんのさんからのアドバイスもいただきながら、今日の講座は終了となりました。

■こころに残ったことばたち
欲したときには、なかったんです。あるときに大事にしてこなかった。
だから、いまあるものが愛おしい。

自分のことをどれだけ知ることができているか、ということだと思います。
癖や性格はもう変えられないし、直せない。曲がっていることころは受け止めてほしい。
逆に相手のそういう部分も受け止めるから。
そんなふうに思えるいまの自分だったら、離婚せずにいられたかも。

日常生活からおこる喜怒哀楽を吐き出せる場所があるとラク。
茶座も、そんな場所になるといいなあと思っています。

経験を積むと、それだけじゃない、と思える。
これもある、あれもある、となるんです。
絶対、のコースはありません。それが、必ずいいものをもたらすこととイコールではないんです。
どんな経験も、していて損ではない。
ひとつの経験では、ひとつのことしか語れないから。

■感想
いつも優雅でさわやかなあんのさんに、こんな歴史があったなんて!
と驚きつつ、歴史があるからこそ、魅力があるんだなと納得しました。
わたしの人生も、あなたの人生もドラマだけれど、それを生きる力に変えられているかどうか。
振り返るほどのものでもないけれど、自分のことを振り返ってみようと思った一日でした。

市民広報記者≪かきた≫

+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+

■八宝茶の解説
・ナツメ→赤いものは、女性の血の流れをよくする。クコの実なども。
・しょうが→中国の人は、新しょうがは買わない。
老(ラオ)と言われる、古しょうがの方が価値がある。風味がおちつき、栄養価もあがる。
新か、老か。いろんな場面で聞かれる。老とは、老いた、ではなく、熟練した、という意味。だから、老人への敬意も深い。
・梨→喉のいがいが、咳込みなどによい。この季節になると、屋台で梨ののど飴が売られる。蒸して食べたりもする。
・みかんの皮→北京の家は、だいたいがセントラルヒーティング。暖かいけど乾燥する。スチームの上に、みかんの皮をおいている。香りもよく、風邪予防にも。最後にはお茶に入れて飲んだりする。
・菊→梅雨時期から秋まで、よく飲まれる。夏でもクーラーがなかったりするので、五臓六腑に熱がたまる。それをとってくれるのが菊。肝臓が悪いと目がしょぼついたり、内臓が悪いと耳鳴りがしたり。そういう五臓の不具合をとりのぞいてくれる。

マカオで人気のエッグタルトです。
写真⑦エッグタルトはマカオで人気♪
運命のお茶に出会ったときのエピソードを披露しています。
写真②:運命のお茶に出会ったときのエピソードを披露
材料の8割が山口のものという八宝茶です。
写真③:材料の8割が山口のもの(八宝茶)
参加者一人ひとりの質問に答えるあんのさんです。
参加者一人ひとりの声を丁寧に受け止めて・・・
笑顔のあんのさんです。
人が集まって「お茶」を飲む・・そこから未来が生まれる