ソーシャルインパクト志向NPO超育成塾オープニングセミナーレポ

いよいよ始まりました。今年度のNPOスーパー育成塾。
「ソーシャルインパクト志向NPO超育成塾」

オープニングセミナーは日程が急きょ変更したにも関わらず、8月26日、27日と合せて、25名の方にご参加いただきました。

講師は、日本地域福祉ファンドレイジングネットワークの久津摩和弘氏。
さぽらんてでも、これまで企業とNPOのつながりプロジェクト「支え人。」や昨年の「地域を巻き込むプロになろう!」のコーディネーターとしてお世話になりました。

参加者は、NPO、中間支援者、企業関係者、行政関係者などの多様な顔ぶれ。
ソーシャルインパクトもファンドレイジングもまだまだよく知らないビギナーにむけて、オープニングセミナーみっちり3時間が始まりました。

「成果が出せるNPOでなきゃ意味がない!」今回のセミナーがスパルタになる予感マックスです。

そもそも、積極的な財源確保をタブー視する傾向のNPOに対して、ファンドレイジングの伝道師として活動される久津摩講師のミッションは、
「お金がないで諦めないで成果を出せる社会課題解決の実現」。
そのために日本地域福祉ファンドレイジングネットワークCOMMNETを設立されたそうです。

セミナーの前半は、ソーシャルインパクトとは?なぜソーシャルインパクト志向(成果を出せる組織のために)概論、後半はどうお金を集めるかというファンドレイジングの事例、手法内容でした。
セミナー内容のポイントのみ、簡単にお伝えします。

■ソーシャルインパクト志向NPOに向けて

□ソーシャル(社会的)インパクト=活動や投資によって生み出される社会的・環境的変化

□投資とは、助成金・寄付金、融資、時間、専門知識、物理的資産、ネットワーク、評判、有償・無償で働いている人 など

□ソーシャルインパクトの創造サイクル
何を投資するのか?
どの問題に取り組むのか?
どのような手順を踏むのか?
成功はどのように測定するのか?
インパクトを大きくするにはどうすればよいのか?

□進め方(背景、価値観が違うので世界共通の基準はない)
1 どんな社会課題を解決するプロジェクトにするか?
解決したい社会課題は何?起こしたい変化は何?生み出したい事業は?
2 社会課題の把握・調査
誰もが共感できる数値データで示せる?お金をかけてでも調査することが必要
3 プロジェクト名、ミッション、ゴールコミットメントを決定
組織の存在理由は?成功とは何を意味する?インパクトの目標は?
4 社会課題の共有
だれもが社会課題だと共有できるもの、組織のだれもが目指していることが言えるように。
5 最高の解決策つくる(活動・体制等)
どの活動や介入が上手く目標を達成できるのか?
6 解決策の検証
専門家などに理論化された課題と解決策の相関関係を確認してもらう
同じ分野で既に活動している団体の情報をチェックする
7 (解決策のために)必要なものの洗い出し
最高の解決策を実現するために必要なもの、スキル、必要な経費をあげる。
8 どのようなプロボノ・ボランティアが何人必要か
組織運営に必要なプロボノの洗い出し
9 実現のために必要な目標金額の決定
事業準備に向けての立上げ目標額を出す
10 事業、ファンドレイジングの実施
ゴールから逆算して課題解決のための最高の事業と財源確保の目標額と手法を決定
自主的に動いてくれるボランティアの育成
11 測定
投資が社会的インパクトを生んでいるのか確かめるため、間違った方向にいかないためにも意地でも測定できる評価指標をつくる
ボランティアなど測定評価してもらえるようにしていく

■ファンドレイジング
○ファンドレイジングとは、NPOが、活動のための資金を個人、法人、政府などから集める行為の総称。(日本ファンドレイジング協会)

○ファンドレイジングとは、フィランソロピー(社会貢献)とその発展のための寄付を受ける、計画的及び戦略的活動(ロッソ)

○ファンド・レイジングの目的は資金を調達することではない。それは、NPOが目的を共有する市民と一緒に活動しつつ、その自立性維持を助けるための行為である。(キャサリン・ケリー)

1 なぜ、非営利団体でお金が必要?
活動を重視するあまり、財政基盤を強化しなければ社会的使命も達成できないという現実が軽視されてきた。
行政の補助金に頼らず、体制を強化し新たなサービスを作って、意地でも解決を図るのがNPOの使命。

2 ファンドレイジングとは?
最終目的は「資金調達」ではなく、「社会課題の解決」。NPOの商品は社会課題の解決。優秀なファンドレイザーは、寄付をくださいと言わずに現状と解決策を丁寧に説明することで寄付が集まる。

※組織としてファンドレイジングを考える上での必要な原則
第一の原則:ファンドレイジングを「単なる資金集めの手段」ではなく、「社会を変える手段」として捉え直す。
第二の原則:ファンドレイジングは「施しをお願いする行為」ではなく、社会に「共感」してもらい、自らの団体の持つ「解決策」を理解してもらう行為であると考える。
第三の原則:「良い活動をしているのに寄付などが集まらないのは社会が成熟していないからだ」という発想を捨てる。
≪参考資料:鵜尾雅隆(2009)『ファンドレイジングが社会を変える~非営利の資金調達を成功させるための原則~』(三一書房)≫

ファンドレイジングは恋愛と同じ、少しずつ距離を縮めていく関係構築が必要。
そのためにファンドレイジングをサイクルで考える必要がある。
※画像参照

3 財源の特徴を知ろう
会費・寄付:自由度は高いが資金調達の効率は低い
委託金:自由度は低いが資金調達の効率は高い
助成金:自由度は低いが資金調達の効率は比較的高い
事業収入:自由度は高いが、儲けを出すことは難しい
立ち上げ時は、助成金や補助金を活用し、助成金が終了したら、事業収入や寄付金で安定させていく。

4 成功事例を学ぶ
人は人に寄付をする!
□NPOの事例
【NPO法人ワールドビジョンジャパン】
チャイルドスポンサーシップを軸に30億円(1992年2億)を集める。
チャイルドとの交流や報告で支援の成果を実感。
【NPO法人かものはしプロジェクト】
少女買春問題への取組み、売る側の問題、買う側の問題両方から対策
金額に応じた具体的な支援物資を提示
□クラウドファンディング
□もったいない文化に合ったファンドレイジング
□遺贈
□コーズ・マーケティング(CRM)寄附付き商品

最後に、「社会課題を解決することは、楽しくておしゃれでカッコイイ!」と締めくくってくださいました。

長丁場のセミナーにも関わらず、みなさん熱心で、10団体が参加する次回からのワークも楽しみです。
NPOや地域づくりの中間支援者の方で支援セオリーを学びたい方の見学も受け付けておりますのでご連絡ください。

日程の案内はこちらから

<渡邉>

ファンドレイジングサイクル
成果が出せるNPOを支援
3時間の長丁場でも熱心な参加者
1分間のプレゼンタイム
久津摩講師