NPO運営研修会レポート(12月13日開催)
講師:村林康彦(さぽらんてセンター次長)
法人格取得は、様式例や参考書籍を見ながら簡単に取得できるものです。でも書類は整えて法人化したはいいけれど、運営面で行き詰まることはよくあります。法人化は、法人格を取得することではなく、継続したしくみの中で運営していくことが本来の目的です。申請書類を整える前に、まずは本当に法人格が必要なのか、法人となって組織をどのように進めるのがいいのかを考えていこうと開催しました。
1.NPO法施行の背景
阪神・淡路大震災の災害救援が長期化することにより、継続した活動が出来る体制が必要となってきたこと、ボランティアや任意団体のサービスがニーズに合せて多様化し、新たな社会を支える3本目の柱として非営利活動組織(NPO)に期待が集ってきたことにより、議員立法として『特定非営利活動促進法』が1998年12月に施行された。
2.全国のNPO法人の概要
(1)認証数等(2007年10月末現在)
全国 山口県 山口市
認証済数 32,909 296 53
解散数 1,612 12 ―
認証取消数 177 2 ―
(2)法人の活動分野内訳(2007年9月末現在)
①保健・医療又は福祉の増進を図る活動 (19018団体)
②社会教育の推進を図る活動 (14974団体)
③団体の運営又は活動に関する連絡、助言または援助の活動 (14767団体)
と続く。
○最も多いのは、保健・医療・福祉分野。
これは居宅介護支援を行うためには法人格が必要なことも一因
○団体の運営相談・支援の分野が多いのは、行政の受託事業などで全国で支援センター等の支援機関が増えているとも言える。
3.認定NPO法人
NPO法人自身が税制優遇を受けられるほか、寄附した人も所得控除が受けられる。一定の要件を満たすことにより、国税庁が認定。⇒現在全国で74団体(2007年12月1日)※全国認証数の0.22%
4.法人格のメリット・デメリット
(1)メリット(権利)
①契約の主体となれる
法人格取得前⇒事務所や資器材を借りるのも、通帳作成も代表個人名義
法人格取得後⇒通帳だけでなく、全ての契約行為が法人名で可能
②団体と個人の資産を整理できる
法人格取得前⇒活動に活用している資器材も団体所有物が個人の持ち寄りかが不明瞭
法人格取得後⇒法人として契約・購入する資器材のため、団体の所有が明確になる
③個人より信用が作りやすい
法人格取得前⇒団体の認知度にもよるため一概には言えないが、団体名よりも代表者個人の信用度に影響されやすい
法人格取得後⇒認知度や活動実績にもよるが、“NPO法人”=非営利の公益法人として、法人への信用が作りやすい
(2)デメリット(責務)
①毎年の官公庁への実績報告等が必要
法人格取得前⇒実績報告や決算等は、団体内で作成し確認(中には作成していないケースも・・・)
法人格取得後⇒事業年度が終了後に毎年所轄庁へ報告書および収支計算書等を提出。法務局にも財産登記が必要
②ルールに基づいた運営が必要
法人格取得前⇒会則はあっても基本的なことしか規定していない場合が多く、ほとんどは会員同士の了解のもとで運営
法人格取得後⇒理事会や総会での検討事項や案内の期間や方法等、様々な運営方法が定款に規定されている。そのため、定款に従って運営する必要がある。
③残余財産は戻らない
法人格取得前⇒団体で購入していた資器材は、解散時にどうするかは会員で決められる、そのため、場合によっては会員が活用する場合も・・・
法人格取得後⇒NPO法や定款で定められているように、所定の事務手続きを行い、その上で寄附することになるため、会員が活用することはできない
④課税対象として捕捉される
法人格取得前⇒収益事業を行うケースが少ないことから、税金に関わることも少ない
法人格取得後⇒法人であることから、外部からも見えやすく、捕捉されやすくなる
5.組織と集団の違い
※NPO・NPO法人⇒Non Profit Organization(非営利組織)
※ボランティアグループ⇒Volunteer Group(ボランティア集団)
(1)組織と集団の違い
《辞書》
組織(organization)・・・特定の目的を達成するために、諸個人および諸集団に専門分化された役割を与え、その活動を統合・調整する仕組み。または、そうして構成された集団の全体。また、それを組み立てること
集団(group)・・・ある共通の目的をもち、相互に依存の関係をもつ諸個人の集まり
《社会心理学的な見地》
組織(organization)・・・ 一定期間持続する集団。その持続性という性質から、社会全体の規範によって統制されるもの
★フォーマル(形式的)な集合体
集団(group)・・・共通の目的をもち、相互に依存しながら、集団内の規範によって統制されるもの
★インフォーマル(非形式的)な集合体
《整理すると・・・》
組織(organization)・・・特定の目的をもち、役割分化した構造をもち、社会全体のルールによって成り立つ集合体。
集団(group)・・・共通の目的をもち、メンバー相互に関係性をもちながら、集団独自のルールによって成り立つ集合体
6.法人化すると必ず行う事務
★経理関係★
【毎日の経理処理】
・伝票作成や整理、ファイル化
・税金の納付
【年度末・初めの処理】
・財産目録や収支計算書、損益計算書、貸借対照表、備品台帳の作成
・減価償却や税務等
★事業関係★
【毎日の処理】
・事業記録の作成
【年度末・初めの処理】
・事業報告書の作成
・事業計画書の作成
↓
○所轄庁への事業・決算報告
※事業年度終了3ヶ月以内
○法務局への財産登記
※事業年度終了後2ヶ月以内
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法人格を所得するということは、権利を得る代わりに義務も負います、そのために活動や事業だけでなく、経理・税務・記録・保存等の事務機能を持つことが必要です!
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