平成17年7月26日開催された講座の内容をお伝えします。
1. 特定非営利活動促進法(通称:NPO法)施行の経緯
阪神・淡路大震災では、全国で140万人のボランティアが駆けつけ、ボランティア活動。中には、団体が拠点を設置し、数年にわたり支援活動を展開したところもあります。しかし拠点や資機材の賃貸借契約が個人名であり、組織活動として、現地に滞在する人が替わると又貸しということや、継続するための資金が不足し寄付を募っても個人の所得になること、団体の信用性、認知度が低くなかなか寄附が集まらないなどの課題がありました。
また、一方では、国民生活が豊かになるにつれ、またライフサイクルの変化に伴い、国民のニーズが多様化し、行政・企業を柱とする社会では、そのニーズが充足できなくなってくるなど、現状の社会の仕組みに行き詰りが見えてきました。そのため、ボランティアや任意団体のサービスがニーズに合せて多様化していく、新たな社会を支える3本目の柱として非営利活動組織(NPO)に期待が集まってきました。
そこで、1998年12月1日議員立法として『特定非営利活動促進法』が施行されました。
資本金なしでも法人格が取れるなど、市民への敷居は低くなったのですが、反面ザル法とも言われています。これは、書類が整えば誰でも取得でき、これまで不認証になった団体はごくわずかに過ぎません。ですからNPO法人というだけで、社会的信用あるわけではなく、また、補助金が出るものでもありません。
2. NPO法で定める分野
① 保健、医療または福祉の増進を図る活動
② 社会教育の推進を図る活動
③ まちづくりの推進を図る活動
④ 学術、文化、芸術またはスポーツの振興を図る活動
⑤ 環境の保全を図る活動
⑥ 災害救援活動
⑦ 地域安全活動
⑧ 人権の擁護または平和の推進を図る活動
⑨ 国際協力の活動
⑩男女共同参画社会の形成の促進を図る活動
⑪ 子どもの健全育成を図る活動
⑫ 情報化社会の発展を図る活動
⑬ 科学技術の振興を図る活動
⑭ 経済活動の活性化を図る活動
⑮ 職業能力の開発または雇用機会の拡充を支援する活動
⑯ 消費者の保護を図る活動
⑰ 前各号に掲げる活動を行う団地あの運営または活動に関する連絡、助言または援助の活動
※ ⑫~⑯については、施行当初からではなく後から追加されたもの。(それまで第3セクターが行っていたことを市民ができないかという視点で盛り込まれた。)
3. NPO法人の現状
全国 山口県
受理数 23,490団体 205団体
認証数 21,996団体 196団体
不認証 139団体 0
解散数 420団体 6団体
認証取消数 25団体 2団体
(2005年5月31日 現在)
☆活動分野は、
1位 丸1保健・医療または福祉の増進を図る活動
2位 丸2社会教育の推進を図る活動
3位 丸17団体の運営または活動に関する連絡。助言または援助の活動
4位 丸11子どもの健全育成を図る活動
(2005年3月31日 現在)
☆認定NPO法人(税制優遇のあるNPO法人)
34団体(6月28日 現在)
☆山口市の現状
36団体
参加者に知ってる団体は何団体ありますか?と聞かれ殆ど知っていない現状がわかりました。
法人格を取得しただけでは、社会認知が得られるわけではないのです。
4. NPO法人格
(1) メリット・デメリット
丸1一般的に言われるもの
メリット デメリット
○ 契約主体になれる ○官公庁への届出が必要
○ 団体と個人の資産を整理できる ○ルールに基づいた運営が必要
○ 個人より信用がつくりやすい ○残余財産は戻らない
○課税対象として補足される
※きちんとした報告・決算が必要です。
信用を得るためには、当たり前の作業です!
丸2山口県での法人への支援策
○NPO法人サポート融資事業・・・NPO法人による社会貢献活動を一層促進するために、融資を行う。
・ 実施主体:県
・ 融資対象:県内に事務所を置くNPO法人 設備資金及び運転資金
・ 融資枠:2億円
・ 融資限度額:500万円(償還期限:設備資金5年、運転資金1年)
・ 融資利率:1.9%
○ 不動産取得税の課税免税・・・不動産(土地・家屋)の取得に対して課税される取得税が免除される。
《要 件》
・ 設立の日から3年以内に取得
・ 定款に定める特定非営利活動事業に活用されるもの
・ 無償で譲渡を受けたもの
○ 自動車取得税の課税免除・・・自動車の取得に対して課税される取得税免除される。
《要 件》
・ 設立の日から3年以内に取得
・ 定款に定める特定非営利活動事業に活用されるもの
・ 無償で譲渡を受けたもの
丸3全国でのNPO法人への支援策例
・千葉県市川市・・・『市民(納税者)が選ぶ「市民活動団体支援制度」
市民が、市民税の1%を団体あるいは基金へ希望することができる。
また、団体はあらかじめ助成を希望する事業等を登録し、市報等で周知される。
詳しくはこちら
(2) 任意団体・NPO法人・有限会社・・・その選択のメリット・デメリット
※いずれも公益的な活動(事業)をすることを前提として
メリット デメリット
任意団体○いつでも解散可能 ○契約行為の主体となれない
○自由な運営・活動が可能 ○一般に信用が得にくい
○残余財産の分配も可能
○助成金申請可能
NPO法人 ○個人よりは信用が得やすい ○残余財産は戻らない
○契約行為の主体になれる ○利益の分配可能
○助成金申請が可能(選択肢広がる)○毎年度の報告等が必要
有限会社 ○営利を追求できる ○一般的に公益に見られない
○利益の分配可能 ○助成金申請ができない
○出資法の範囲内で出資金をつのること可能
○中小企業庁関連の補助や融資制度等が利用可能
※ 団体としての継続性を持ち、継続性を持って、委託を受けたいと法人格を取得し、運営が困難になることがみられる。法人格を取得しただけではばら色ということではなく、公開性・透明性のある団体にならないと、社会からの信用もなく、寄附も受けられない。
5 法人申請に必要となる書類
(参考)
① 定款
② 役員名簿(氏名・住所・報酬の有無)
③ 各役員の誓約・就任承諾書
④ 各役員の住所または居所を証する書面(住民票)
⑤ 社員のうち10人以上の氏名・住所名簿
⑥ 確認書(特定非営利活動促進法第2条第2項第2号及び第12条第1項第3号に該当)
⑦ 設立趣旨書
⑧ 設立総会の議事録
⑨ 設立年度及び翌年度の事業計画
⑩ 設立年度及び翌年度の事業予算書
※ 特に予算・組織運営などの権能を理事会、総会のどちらにおくかなど、①定款と⑦設立趣旨書は、団体の基本なのでしっかり悩んで下さい!
6 認定NPO法人とは
NPO法人のうち、一定の要件を満たす法人が国税庁に申請し、認定を受けた法人。
寄附金控除等の税の優遇措置を受けることができる。
(1)具体的なメリット
①個人が支出した認定NPO法人への寄附金に対する特例措置
寄附金―1万円を所得金額から控除
② 法人が支出した認定NPO法人への寄附金に対する特例措置
一般の寄付金に係る損金参入限度額
+
認定NPO法人等に対する寄附金に係る損金算入限度額
③相続人等が認定NPO法人に寄与した相続財産等に対する特例措置
相続税の課税対象から除外
④ みなし寄附金制度
収益事業で得た利益を、非収益事業に使用した場合、一定の範囲で寄附金とみなす。
(2)0.15%の現実
実際には、認定NPO法人になれた法人は、全NPO法人の0.15%・・・
《要 件》
○ 寄附金総額が総収入金額の5分の1以上
○ 事業活動に占める共益的活動の割合が50%より低い
○ 事業費総額に占める特定非営利活動事業費が80%以上
○ 受入寄附金を特定非営利活動事業に充当する割合が70%以上 など
認定NPO法人で成功している組織は、マーケティングがきちんと出来ていいること、寄附者へのメリットがあることが挙げられる。
2時間にわたり以上の説明がありました。最後に経済同友会からの提言をもとに
○優れたNPO経営者の育成
○企業を有する人材・知恵を生かす組織作り
○革新的な寄附開拓や有志の仕組みを創るなどの事務基盤作り
○運営の透明性に向けた情報公開・評価の徹底
○認定NPO法人の認定要件の緩和などの寄附金税制の拡充
これらがこれからのNPOの発展のカギだということでした。