動物は人を決して裏切りません・・・

啓発活動の一部として「生体譲渡」は不本意ながら定番でもありました。

ご縁あって新しい家族として迎えていただき微笑ましい姿を拝見させていただき感謝感謝、でも時と共に家庭環境も変化し全て今も100%花丸付きです!と胸を張って言えないご家庭も悲しいかな・・・中にはあります。「人を見る目を肥やすしかない」と弁護士さんにも言われました。
勿論、そう言う事態を見越してのご覚悟を事前に確認しての上での譲渡なのですが、やっぱり理想と現実は違って、いざその事態になるとやっぱり「無理」ってなるのでしょう。

犬のA君の場合もそう、素敵なご家族がA君にご縁を感じ迎えて下さって皆さん微笑んでの記念写真やお宅訪問時などの写真が手許にあります。
数年たち心ならずも事情が変わり荒んでゆくご家庭の事も把握していましたが、私たちからしたら「暴力だけが虐待ではない」と思ってもご本人達は「家族の一員です!」と心から仰ると、それ以上には踏み込んで言う資格はなく歯がゆい思い。
状況は進み昨年「明らかに哀れな犬の姿」を見かねて新たな飼い主になりたいとご近所の方から相談を受けました。
そこで初めて譲渡契約違反と申し出て、A君は新しい家族の元で暮らすことになりました。健診の結果懸念していたフィラリアにもかかっていなくて安堵した次第です。
当のA君もその後会う度に表情が出て生き生きとし、今の生活に満足していると、勝手に上から目線で思っていました。

年が変わり先日、元のご家族が引っ越しをされたそうです。
近所とはいえ、犬のA君からは見えないし声も聞こえないし知るよしもないはずなのですが、当日から様子がおかしく翌日頑丈なワイヤーリードを引きちぎって突然脱走したそうです。
何処へいったか?もぬけの殻になっている元のお家にいたそうです。
勿論新しいご家族はA君の状態に驚き用心して大型犬用の鎖で新たに係留したものの、翌日再度根元のコンクリートを破壊しての脱走・・・・!?
暫く捜しても姿がなく諦めた頃幸い保護され無事に戻ることが出来ました。
でも・・・犬が知るよしもない元飼い主の引っ越しを何故関知したのか??
事前に元飼い主からこちらへ挨拶があったわけでもありません。
何処へ行かれたか解らない元飼い主を捜して回るその姿を思うと胸が詰まります。

誰がどう見ても今の生活が家族として迎えてもらって幸せな姿なのに、気まぐれで本当に時折声をかけてもらえるだけになっていた元宅がこの子にとっては「大切な家族」だったのか・・・・・
そう思うと、とても切なく胸が痛くなります。
A君の意思を無視して私たちの思いのみで離別させ、元飼い主はその後会いに来るわけでもなく目の前からいなくなって清々したと思われていたのに、A君は忘れるどころかなお一層元の家族を慕っていたのかと。
あまりにほったらかしのA君が哀れで見ていられないと、手を差し伸べられた新しいご家族の方もこんなに犬の心は篤いのかと余計なことをしたのかと心を痛めておられます。

犬の情の篤さ・・・私たち人間はもっと動物たちから学ばなくては行けないし無くしてしまった大切な物を取り戻さなくては行けないとやるせない気持ちになった出来事でした。

皆さんはこのA君の行動をどう思われますか?