第1回 やまぐち子どもの本カレッジ 「絵本の翻訳とは~「げんきなマドレーヌ」を中心に~」

ローズマリー・サトクリフの作品の翻訳や絵本や児童文学の評論家としてご活躍中の灰島かりさんをお迎えしての講演会「絵本の翻訳とは~げんきなマドレーヌを中心に~」(第1回やまぐち子どもの本カレッジ)が開催されました。
今年度から開始された「やまぐち子どものカレッジ」は「絵本と関わって3年以上」の人が対象という条件付きでしたが、各地から30名を超える参加者がありました。

ちくま文庫から新訳で出版されたローズマリー・サトクリフ著『ケルトの白馬』(『ケルトの白馬/ケルトとローマの息子』 筑摩書房 ケルト歴史ファンタジー)を含む自作についての紹介の後、絵本の構造や絵本の絵を読むということについての考えを話された後、具体的な例として、マージョリー・フラック作『おかあさんだいすき』(光吉夏弥/訳・編 岩波書店 岩波子どもの本)のうち『おかあさんのたんじょう日』をとりあげられました。

ダニーはお母さんの誕生日のお祝いの品を見つけに出かける。たまご(めんどり)、枕(がちょう)、チーズ(やぎ)、毛布(ひつじ)、ミルク(めうし)とだんだん大きくなっていく家畜(母親のイメージ)との出会いを経て、森という異界にすむ熊に会いに一人で出かけていく。
少年が森へ出かけるというのは即ち少年の成長物語に他ならないのだ、ということが実感されるお話でした。

岩波の子どもの本が初めて出版されたころの出版事情もあってか、原作の横書きが日本語の縦書きとなったときの挿絵の向きの変換がされないままであることからくるある種の違和感につても言及されました。(原田は最近出版されたルイス・スロボドキン作『やさしい大おとこ』(こみやゆう/訳 徳間書店)にも同じ印象を受けましたが、この講演後に手にしたので納得できました。)

翻訳にあたって訳しにくい言葉として丸1you 丸2no 丸3fairをあげられましたが、これは彼我の文化の違いでしょう。

その訳の魅力で活きている例として、『ぼちぼちいこか』(マイク・セイラー/文 ロバート・グロスマン/絵 いまえよしとも/訳 偕成社)『すばらしいとき』(ロバート・マックロスキー/作・絵 わたなべしげお/訳 福音館書店 世界傑作絵本シリーズ・アメリカの絵本)を挙げられました。

翻訳者にはなれないまでも、いつか原書と読み比べてみたい、と思いました。 
(秋穂BC H・H)

日 時:2013年7月9日(火)13:30~15:00
場 所:山陽小野田市立中央図書館 視聴覚ホール
講 師:灰島かり(翻訳家・児童文学評論家)
参加者:約30名

この活動はこども夢基金の助成を受けて行いました。