11月26日(火)、温暖化とめるっちゃネットワークやまぐちの先進地事例視察研修に参加し、防府バイオマス・石炭混焼発電所を見学しました。
今何かと話題となっている石炭火力発電所であり、木質バイオマスの混焼によりどれだけCO2の排出量削減に貢献しているのか、など山口市民の皆さんの関心が深いからでしょう、『市報やまぐち』No.334(2019.10.15)で先着25人で募集したところ、たくさんの方から参加申込があり、急遽大型バス2台を連ねての視察研修となりました。
それでも10名強の方が参加できなかったそうです。
車窓から
予定ではバスの中でビデオ観ての視察だったらしいのですが、バス2台ということで、工場内を歩いて見学することができ、とてもラッキーでした
ただ、そのためか、質疑応答の時間がなくちょっと物足りなくもありました
構内地図
ボイラー架構
向こう側は隣の工場
冷却塔とタービン建屋
FAタンク
バグフィルタ
重油タンク
誘因通風機室
バイオマスサービスタンク
国内バイオマス受入ホッパ
国内バイオマスを投入
噴射機
箒も使います
国内バイオマス受入ホッパ建屋
左のB-バイオマスサービスタンクがPKS 右のA-バイオマスサービスタンクが国内木質チップ
PKSバンカ
苛性ソーダ・凝集剤・塩酸のタンク
高い煙突は排気筒
コンベア
この先に三田尻港
コンベア
左がPKS、右が石炭の貯蔵バンカ
貯蔵バンカの間に石炭サービスタンク
石炭バンカ
鉄塔
変電・発電設備
BAタンク・砂タンク
蒸気タービン・発電機
中央制御室
冷却塔・事務所棟
タービン建屋
右は押込通風機室
防府バイオマス・石炭混焼発電所は、防府市鐘紡町のエア・ウォーター株式会社 防府工場の敷地内にあります。
2017年6月に建設工事を開始し、2019年7月21日(日) に営業運転を開始したばかりのホヤホヤの発電所です。
鐘紡町の地名から分かるように、もとカネボウ防府工場の跡地にあります。
昔この町を何度か訪れたことがあるのですが、構内もそうですが、周りも様変わりしていました。
また、「AW エア・ウォーター」というマークのあるトラックは日頃からよく見かけていましたが、エア・ウォーター株式会社が、もともとは、空気から酸素や窒素を主に製造する産業ガスの会社だ、ということを今回の説明で初めて知りました。酸素や窒素を造るにはたくさんの電気を使い、2011年の震災の際の電力不足で、電気の安定供給の必要性を感じ、発電事業に乗り出されたそうです。
火力発電所の運転、保守および電力の販売を行っているのは、火力発電事業会社エア・ウォーター&エネルギア・パワー山口株式会社(略称:AWEP山口)です。
エア・ウォーター株式会社(本社:大阪府大阪市中央区)と中国電力株式会社(本社:広島県広島市)の共同出資の会社です。
株式は、エア・ウォーター株式会社が51%、中国電力株式会社が49%保有しています。
デザインは背景に溶け込むように留意し、基本的な色も灰色にしたとのことです。
発電出力は約11万2千kWで、一般家庭約24万世帯分で、防府市全体の電気を賄うことができるそうです。
年間の発電量は約8億kWhの予定で、得られた電力は再生可能エネルギー固定価格買取制度(FIT制度)を活用して売電しています。
発電方式は循環流動層ボイラ(CFB:Circulating Fluidized Bed)を採用しています。
ボイラ下部から流れ込んだ空気で燃料を浮遊・循環させながら燃焼させる特徴があり、荒く砕いた燃料を使用することがで、燃料の多様性に優れており、木質系バイオマスの混焼を高めることが可能で、また、低温燃焼(800~900℃)のため、窒素酸化物の発生を抑制することが可能だそうです。
排ガス中の硫黄酸化物(SOx)、窒素酸化物(NOx)低減のために、ボイラ炉内への石灰石の吹き込みによる炉内脱硫と、尿素注入による無触媒脱硝を行っています。
ボイラ架構は60mで、排気筒を入れても、90m以下です。
燃料は山口県内から調達する未利用間伐材や、海外から輸入するPKS等の材木質バイオマスと石炭。年間、県内産木材 4万t、PKS 24万t、 石炭 18万t 使います。
混焼率は熱量ベースでバイオマス最大50%、石炭50%です。
未利用間伐材は、間伐等により伐採され、これまで使用用途がなく森林内に放置されていた未利用木材を粉砕してチップ化し、山口県内のバイオマスセンター各工場(飯森木材株式会社森林バイオマスセンター宇部工場・下関工場、山口県森林組合連合会山口北部木材センター、和泉木産業株式会社周南バイオマスセンター)から運搬しトラック運搬しています。
国内バイオマス受入ホッパに、毎日150tのチップが運び込まれます。
粉塵がでないような様々な工夫をしています。
PKSとは、Palm Kernel Shellのことで、パーム椰子の種から搾油した後の殻を乾燥して燃料としたものです。
主にインドネシアやマレーシアなどの東南アジアから徳山港に運搬され、その後、防府三田尻港へ移送し、陸揚げされています。
PKS問題については別の項で述べたい、と思います。
敷地が狭いため、石炭やPKSの野積みができないので、石炭・PKS運搬内航船「維新」(約3000トン)が周南バルクターミナル(石炭)、PKS荷揚げ・保管場所(徳山港)と下松石炭中継基地の間を月24~5日 内航輸送しています。
石炭 1300t、PKS 1400tを朝積み込み、午後には三田尻港に着きます。
「維新」は荷物の積み降ろしを自動で行う「セルフ・アンローダー」という設備を備えています。船上に揚げ荷装置を持つ船を「セルフアンローダー船」と呼びます。
荷降ろしは船の中に設置されたコンベアが行います。船底から垂直に立ち上がる「垂直コンベア」と「従動ベルト」で石炭やPKSを挟み込んで「コンベアタワー」の高さまで持ち上げ、「ブームコンベア」上に落とし、陸側に搬出される作りになっています。
三田尻港から発電所までを結ぶ、全長約450mのコンベアがあります。「維新」に積載された石炭・PKSは三田尻港で荷揚げされた際、受入ホッパに投入され、コンベアで各バンカへ運ばれます。
発電所ではボイラで大量の蒸気を発生させ、タービンを動かした後、冷却塔で外気と熱交換し、水の状態に戻しボイラ内に送り込み循環運転しています。
その冷却塔で熱交換する媒体として、海水を取水する水路を引くのが難しかったこともあり、山口県中部を流れる一級河川 佐波川の豊富な水を使用します。
1日9,400㎥(25mプール約26杯分)取水します。運ばれた水は工水受水槽という貯水用の建物に一時的に溜められます。その内、冷却塔で約9割にあたる8,800㎥を消費します。
そのため海水の取水、温排水を排水しない構造の冷却塔を使用しています。
FAタンクには、Fly Ash(フライアッシュ)(石炭を燃焼する際に生じる細かな灰)を貯蔵し、埋め立て用・リサイクルセメント・土壌改良に使います。1日80t~100tです。
重油タンクがありますが、重油は立ち上げのときに使います。
構内のあちこちにカネボウの遺構があります。
カネボウの跡地にある隣接している工場。
株式会社 FILWEL。人工皮革等の製造販売の会社。
防府エネルギーサービス株式会社。
株式会社ベルポリエステルプロダクツ。合成樹脂(PET樹脂)の製造販売・研究の会社。